献酒(けんしゅ)とは何か知っていますか。慶弔(けいちょう)の行事とお酒は古代より深い縁があります。特にお酒は神事(しんじ)に欠かせません。
たとえば、慶事(けいじ)では結婚式や祭りなど、神様に関わるにぎやかな行事にお酒が利用され、弔事(ちょうじ)では葬儀や法事などにお酒がふるまわれます。
しかし、なぜ慶弔の行事でお酒が用いられているのでしょうか。今回は慶事、弔事の場で使われる献酒について、どのような意味があるのかご紹介します。
目次
献酒とは
献酒とは、神前、仏前、霊前などにお酒を供えることです。日本では古来より、お酒は宗教儀式や祝事・慶事などで大きな役割を果たしてきました。
お酒を神に供えることで豊かな収穫や無病息災を祈り、お供えしたお酒をいただくことで厄を払います。また、お酒は神と人々を結びつけるという大切な役割を担う神聖なものでした。そのため、現在でも神社にお酒を納める際は「献酒」として納めます。
意味を知らずとも、神社やお寺などに足を運び、献酒をされた方も多いのではないでしょうか。献酒には神様にまつわる多くの意味があります。
献酒が行われる場面
献酒は神前や仏前に供えるほか、さまざまな場面で行われる供養の一つです。お墓参りの際は小さなコップにお酒を注ぎ墓前に供えたり、仏壇にお供えとして置いたりします。
法要や法事では会食の場で故人様の遺影の前にお酒を置き、その在りし日の面影に想いを馳せることもあるでしょう。また、近年増えている海洋散骨では故人様のご遺骨を海に還す際に献花や献酒を行い見送るのが一般的です。
故人様の供養で献酒を行う目的
故人様の供養において献酒を行うのは感謝と敬意を表すためです。生前お酒が好きだった方には好みのお酒を捧げることで「喜んでもらいたい」というご遺族の想いが込められています。
献酒後には、そのお酒をご遺族がいただく「お下がり」という風習もあり、故人様と同じものを分かち合うことで心のつながりを感じ、思い出を語るきっかけにもなります。
また、神道ではお酒には「清め」の力があるとされており、散骨の際に献酒を行うのは、その場を清め、旅立ちを神聖なものにするという意味もあります。
神仏へのお供えとシーンによって異なる献酒の呼び方
神仏にお供えを納めることを「奉納(ほうのう)」や「奉献(ほうけん)」といいます。
納める品はさまざまですが、お酒の場合は「献酒」、それ以外のものは「奉納」を使うのが一般的です。
また、献酒は用途によって呼び方が変わることがあります。たとえば、地鎮祭や起工式などで自分の土地の神様に供えるお酒は奉献酒(ほうけんしゅ)と呼びます。神様へお酒を納める意味では同じですが、場面に応じて適切な呼び方が使われます。
献酒で使われるお酒の種類
献酒で使用するお酒に厳密な決まりはなく、大切なのは「故人様が喜ぶものを選ぶ」という想いです。供養の場では生前に故人様が好んでいた日本酒やビール、焼酎、ワイン、ウイスキーなどさまざまなお酒が選ばれます。
故人様の好きだったお酒を通して遺された方々の会話が自然と弾むこともあるでしょう。また、神事や伝統的な儀式では日本酒が選ばれることが一般的です。日本酒は古くから神聖なものとされ、場を清める役割も担っています。
なお、故人様が飲酒できなかった方の場合はジュースやお茶などの飲み物を選ぶこともあり、何より故人様を想う気持ちが大切です。
伝統的な作法と海洋散骨での献酒の仕方
献酒の仕方には、伝統的な作法と現代の供養スタイルに合わせた方法があります。神社にお酒を供える場合は熨斗(のし)をかけ、「奉納」や「奉献」と書くのが一般的です。
祈願や厄払いには「奉納」、お礼の場合には「奉献」と使い分けます。慶事の場合、昔は角樽を納めるのが主流でしたが、現在は一升瓶を1〜2本お供えすることが多くなりました。
一方、海洋散骨の場では散骨後に献酒を行います。船長やスタッフの合図のもと、ご遺族が順番に海へ向かって静かにお酒を注ぎます。心の中であるいは声に出して故人様へのメッセージを送る方も多く、この献酒を行う時間はご遺族にとって感謝や別れの言葉を伝える大切なひとときとなります。
なお、環境への配慮から海に注ぐのはお酒だけにとどめ、瓶や缶などの容器は必ず持ち帰るよう注意が必要です。
故人様を供養するシーセレモニーの海洋散骨と献酒
慶事や弔事など、さまざまな伝統的な場面で重要な役割を果たしてきた献酒。そんな献酒は、「神様に供える」だけでなく、故人様の供養の際にも行われる大切な儀式です。
海へご遺骨を還す海洋散骨では、散骨する海域を清め、ご遺族の想いを届けるために献酒が行われています。
シーセレモニーの海洋散骨では、日本酒やワイン、ビールや焼酎など、故人様が生前好まれていたお酒での献酒も可能です。儀式の一つひとつが故人様への供養となり、ご遺族様の悲しみが癒やされるよう心を込めてお手伝いしています。
また、散骨後も節目の際に供養を続けたい方には「年忌法要クルーズ」もご案内しています。大切な方を自然に還し、心をこめて供養したいとお考えの方は、どうぞお気軽にシーセレモニーへご相談ください。