日本における従来の埋葬方法といえば、先祖代々のお墓に入ることが当たり前でした。しかし、ライフスタイルの多様化に伴って、最近ではさまざまな埋葬方法を自由に選べる時代になってきています。例えば、墓石に納骨するという弔い方だけでなく、樹木を墓標とした樹木葬や海での散骨など、さまざまな形の弔い方を選ぶ方が増えています。
海洋散骨や樹木葬などの新しい供養方法を近年希望する方が増えている一方で、「法律的に問題はないのか?」と疑問に思われる方も多いようです。結論からいえば、国内での海洋散骨は、法律的な意味合いにおいて基本的に問題ありません。しかし、いくつかのルールやマナーは存在しているため、これらに則る必要があります。
そこで今回は、海洋散骨におけるさまざまなトラブルを回避するために、知っておきたい基礎知識や海洋散骨の法律・マナーについて詳しく解説していきます。
目次
海洋散骨は法律上問題ない行為であること
ご遺骨を海に撒くという行為は、日本の法律上において現在問題はありません。その理由として、以下が挙げられます。
海洋散骨について明文化されていない
従来の埋葬方法は、「墓地、埋葬に関する法律」に基づいて行われており、この法律に違反すると罰せられる可能性がありました。
しかし、この法律には海洋散骨を禁じる条文が含まれていないため、海洋散骨自体は法律違反ではありません。総務省も、散骨が節度を持って行われる限り、違法ではないとの見解を示しています。
このため、一部の例外を除き、日本国内では海洋散骨が自由に行える状況です。海洋散骨が法的に許容されている主な理由は、現行法において明確な禁止規定がないことにあります。
ただし、散骨を行う際には、場所や方法に配慮が必要です。特に、海水浴場や漁業権のある海域など、他者に影響を与えうる場所での散骨は避けるべきです。また、散骨前には遺骨を粉骨(細かく砕くこと)することが推奨されています。
業者向けのガイドライン制定
散骨の方法が多様化している現在、海洋散骨や山中散骨、宇宙葬などを提供する事業者の数が増加しています。この流れに伴い、散骨に関する知識が不足している事業者や、不当に高い料金を要求する事業者が現れるリスクも高まっています。
このような背景を受けて、2021年3月には散骨事業者を対象とした『散骨に関するガイドライン』が発表されました。このガイドラインは、散骨サービスの質を維持し、消費者を守るために重要な役割を果たします。ガイドラインには、散骨の適切な手順、透明な情報提供、料金設定の基準などが定められています。
散骨サービスを選択する際には、事業者がこれらのガイドラインに従っているかを確認することが肝心です。さらに、散骨を行う際には、故人の意向や遺族の願いを尊重し、儀式やセレモニーの内容についても事前に十分な相談を行うことが推奨されています。
総務省が提示する「節度を持って行う」散骨とは
海洋散骨は「節度を持って行われる限り」自由に行えると、総務省は提示しています。では、具体的に散骨に関してどのような行動が「節度」といえるのでしょうか。
節度を持って行う散骨とは
粉骨とは、ご遺骨の元の形が分からないように細かく砕く作業です。先程紹介した『散骨に関するガイドライン』では、一辺の長辺が2mm以下を目安にパウダー状にまで砕くことを推奨しています。粉骨作業は個人が行うことも可能です。
しかし、その作業は精神的にも肉体的にもつらいといいます。また、時間が掛かったり、上手に砕けなかったりすることもあるため、強いこだわりがなければ、粉骨専門業者に依頼するのが得策です。
散骨前に必ず粉骨をする
火葬直後のご遺骨や一度納骨をしてお墓から取り出したご遺骨を、そのままの状態で海へ撒くことは禁止されています。
それを無視して撒いてしまうと、最悪の場合、死体遺棄という法律に抵触することになります。そのため、散骨をする前には、必ず粉骨という作業を行う必要があります。粉骨を行うことで、散骨が法的に問題なく行えるようになります。
散骨する場所に配慮する
海洋には個別の所有権が存在しないため、一見するとどこでも遺骨を散布できるように思えますが、実際には他人への配慮が不可欠です。たとえば、海水浴場や観光地、漁場、養殖場など、多くの人々が訪れる場所での散骨は、故人様が生前に望んでいた場所であっても避けるべきです。
このため、総務省は、漁業権がない沖合いや人目につかない場所での散骨を「節度を持って行う」として推奨しています。散骨の場所選びでは、公共の場所や他人の活動に影響を与える可能性のある場所は避けることが望まれます。
これは、海洋散骨の尊厳を守ると同時に、他者への思いやりを示す行為でもあります。散骨を行う際には、これらの点を考慮し、故人を敬いつつ、周囲の環境や他者への配慮を忘れないよう心がけましょう。
海洋散骨の注意点、気を付けなければならないこと
海洋散骨という供養方法は、完全に周知されたものではないため、注意点や気を付けなければならないことがあります。
自治体の条例を確認する
国で定められた法律はないものの、自治体の条例で散骨を禁止していたり、許可が必要であったりする場合があります。条例を制定した理由として、近隣住民とのトラブル防止や観光地のイメージを守るためという背景があります。
現在では、静岡県熱海市や伊東市で海洋散骨に関するガイドラインが策定されているようです。全国的に見ると、散骨を禁止している自治体は多くありませんが、不要なトラブルを避けるためにも条例について必ず確認しておきましょう。
特に、墓じまいを伴う場合や特定の地域での散骨を考えている場合は、改葬許可申請などの手続きが必要になることがあります。
海洋散骨時の服装にも注意
通常、法事に関する場所では、喪服を着用します。それに倣って海洋散骨をする場合も、喪服を着るべきだと思いがちですが、実はマナーとして喪服ではなく普段着が望ましいといわれています。
当日は、散骨場所まで船に乗って沖合へ行きますが、その時利用する乗船場には観光やレジャーを楽しむ一般客が大勢います。そういった方への配慮として、喪服ではなく普段着にします。
また、散骨する海域までは船に乗っていきますが、当日の波の高さによっては足元が不安定になるため、女性はヒールのある靴ではなく、スニーカーのような滑りにくい靴を選ぶのが得策です。
環境に配慮した副葬品
粉末化されたご遺骨の成分は大半がリン酸カルシウムのため、散骨したとしても海洋を汚染することはありません。しかし、ご遺骨とともに副葬品を海に撒く場合には注意が必要です。結論からいえば、副葬品は自然に還るものだけを選びます。
例えば、お花を撒く場合、花束を包んでいたビニールは決して海に投げ込んではいけません。花束も、そのまま撒くのではなく、茎や葉を取り除き、花びらだけを海に撒く方が環境に優しい海洋散骨となります。副葬品に関しては、自然に還るものを選び、環境への影響を最小限に抑えることが求められます。
みなさまに安心していただける海洋記念葬
故人様の生前からの願いや、ご遺族様のご希望により海洋散骨を選ぶ方は増えています。しかし、一般的な供養方法とは違い、今回ご紹介したように、注意しなければならない点も多くなります。そのため、「海洋散骨に関する知識がなくて不安」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そういった場合は、ぜひシーセレモニーの海洋記念葬を検討してみてください。
シーセレモニーでは、故人様の新しい旅立ちの日を大切な記念日にするため、ご遺族の想いに寄り添える散骨を提供しています。散骨プランの内容の詳細は専門のコンシェルジュがご遺族様の想いをお伺いしながら決めていきます。
ご遺族様に寄り添ったプランを数多く提供していますが、そのなかでも特におすすめしたい2つのプランについてご紹介します。
代理散骨プラン
代理散骨プランは、遠方の方やご事情により乗船できないご遺族様に代わって、シーセレモニーのスタッフが散骨を行うプランです。散骨エリアは、東京・羽田空港沖、横浜、湘南、大阪、沖縄と全国各地にあり、それぞれリーズナブルな価格で提供しています。
サービス内容は、散骨・献花・献酒・黙とうといった葬送セレモニーで故人様をお送りいたします。後日、散骨を行った海域を記載した散骨証明書が郵送されるので、年忌法要では故人様の眠る場所でのお参りが可能です。ご遺族様は乗船できませんが、乗船場所までのお見送りができます。
このプランでは、散骨の様子を写真で記録し、ご遺族様にお送りします。これにより、ご遺族様は散骨の瞬間を遠くからでも感じることができます。また、散骨セレモニーでは、故人様に捧げるための花びらや日本酒を用意し、海に還します。散骨が行われた海域の緯度経度を記録した散骨証明書は、散骨後にご遺族様のもとへ郵送されます。
さらに、シーセレモニーでは、環境への配慮を重視しており、公益財団法人「海と渚環境美化油濁対策機構」への寄付も行っています。これにより、故人様を海に還す行為が、海洋環境の保護にも貢献しています。
ファミリー散骨プラン
ファミリー散骨プランは、クルーザーを一隻丸ごと貸切にしてご利用いただくプランです。ご家族やご親戚の方々と乗船し、ご遺族様の手で散骨していただきます。
チャーターしたクルーザーの定員まででしたら、何名様のご利用でも金額は変わりません。エリアは東京・羽田空港沖以外に、横浜・湘南・大阪・沖縄・ハワイでの散骨も可能です。自分たちだけでクルーザーを貸切にできることから、ご遺族様の希望に合わせたセレモニーが行えます。
例えば、故人様との思い出の品を持ち込んだり、故人様が好きだった音楽を流したりと、散骨エリアに到着するまでの時間を、思い思いにお過ごしいただけます。
このプランでは、散骨の際に、色とりどりの花びらを海に撒いたり、故人様に捧げる日本酒を海に撒いたりできます。また、クルージング中や散骨の際に撮影した写真は、データでご遺族様にお送りします。散骨が行われた海域の緯度経度を記録した散骨証明書は、散骨後にご遺族様のもとへ郵送されます。
オプションを追加できる散骨プラン
代理散骨プラン、ファミリー散骨プランともに、オプションを追加することが可能です。
例えば、オンライン乗船オプションの場合、ご自宅にいながらにして当日の散骨の様子を確認していただけます。他にも、個人様のお写真や動画をもとにしたオリジナルムービーの作成も承っています。
散骨後のお食事会も可能
中型以上のクルーザーであれば、お食事のオプションが追加できます。ビュッフェコースや本格船上BBQなど、メニューも豊富です。散骨後に船上で故人様の思い出を語り合いながら、ご会食をお楽しみください。
オプションを複数組み合わせた世界に一つだけのオリジナルの散骨プランは、故人様との最後の時間を、忘れられない思い出に変わるはずです。
献酒追加オプション
故人様の葬送セレモニーの際に捧げるお酒を追加することができます。通常のファミリー散骨プランには四合瓶の日本酒が含まれますが、特に銘柄やお酒の種類にこだわりがある場合には、このオプションが適しています。
ご遺族様がお酒を持ち込むことも可能ですが、シーセレモニーにお任せいただければ、クルーザーへの搬入や片付けまで全て対応します。
ご遺骨で作る世界に一つのダイヤモンド
散骨プランのなかには、故人様のご遺骨を使用して、世界に一つだけのダイヤモンドを作成する特別なオプションもあります。
このダイヤモンドは、故人様の記憶を形に残すための貴重な手段となり、ご遺族にとって大切な思い出の品となるでしょう。
安心の葬送セレモニーをプランニング
海洋散骨は、許可された場所と方法で節度を持って行われる限り違法ではないため、安心して散骨できます。
シーセレモニーでは、乗船される人数やご希望のセレモニー内容によって、最適なクルーザー選びから散骨方法までお客様に最適なプランをご提案いたします。
散骨クルーズをよりイメージしていただけるよう、経験豊富なスタッフが些細なご質問にも丁寧に回答いたします。もし、不安なことや疑問点がありましたら、お気軽にお問い合わせください。